松の司【竜王町 松瀬酒造さん】


松瀬酒造さん(松の司)へ行ってきました

 「松の司」の蔵、竜王町の松瀬酒造さんへお邪魔しました。

 シンプルな造りの入口の扉を開け、スリッパに履き替え、丁寧に手を洗って、蔵の中へ。

 

 はじめに案内していただいたのは、麹室。入った瞬間に、甘く上質な栗のような香りに襲われてびっくりしました。これまでも、麹に鼻を近づけたときにこの香りは何度か感じたことがありましたが、こんな風に、空間全体がこの香りに包まれているのを感じたのは、これがはじめてでした。そこにいるだけで、奥歯の、もっと奥の方から唾液が出てくるような、幸せな甘みを感じる部屋でした。

 一枚の戸を隔てて、となりは蒸米を引き込んでくる部屋になっていました。そこは先ほどの麹室とはまた全く別の香り。炊きたてのお米の、やさしくおだやかな香ばしい香りに満たされていました。

 部屋を案内しながら、杜氏の石田さんがいろいろなことを教えてくださいました。 温度計のなかった頃は、香りの変化が造りの様々な作業のタイミングをはかる重要な要素だったそうです。麹の香りも単純に「栗」というのではなく「栗の花」という表現もあるのだそうです。面白いものでは「おはぐろの香り」というのもあったそうです。 どんな香りなのか想像もつかないですが、昔の人たちは、視覚だけでなく、香りや手ざわりなど、もっているすべての感覚を研ぎすませて、必死に観察していたのだろうと、その姿を想像しました。

 私ももっといろんなものをしっかりと観察して、たくさんの感覚を味わえるようになりたいなと思いました。

 

 見学を終え、蔵を出ようとしたとき、入口にフキノトウが生けてあるのに気づきました。みずみずしく整えられ、背筋をすっと伸ばした春の花の姿は、「松の司」のお酒の中に感じる、凛とした美しい美味しさに、ぴったりと重なったような気がしました。

 


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